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国際開発×ビジネス。アフリカで起業し雇用を生み出したい。

〜25年度2次隊 青年海外協力隊 谷口香津郎(たにぐちかつろう)〜

国際色豊かな医療系NGOでセールスとマーケティンングを担当する谷口香津郎さん。

マラウイに住むことで理解できたアフリカの肌感覚と、ビジネスを通して感じた国際開発。青年海外協力隊の任期修了後もアフリカと関わりを持ち続けていくという谷口さんにマラウイでの二年間と将来のビジョンについてお話しをうかがいました。

—まずは自己紹介をお願いします。

 

25年度2次隊(任期:2013年9月~2015年9月)の谷口香津郎です。職種はマーケティングでPSI( Population Service International)( http://www.psi.org/)という国際NGOで活動をしています。

 

—PSIはどのような活動を行っているNGOですか?

 

アメリカのワシントンに本部があり、世界約70ヶ国にわたって保健医療分野でソーシャルマーケティングを用いて国際問題を解決しようとしているNGOです。マラウイでは主にHIVやマラリア予防、チャイルドプロテクション、ファミリープランニングのプロジェクトを行っており、避妊具や蚊帳の販売や配布、VMMC手術*の無料提供、またクリニックのネットワーク化による格安診療を促進しています。

*VMMC手術・・・男性器の医療包皮切除(割礼)。HIV感染が最大で50%抑制できる。

—谷口さんはPSIの組織の中でどのような活動をされていますか?

 

PSIはドナーから頂いた助成金を使って無料や格安で提供する商品の他に、飲み水を浄化する塩素消毒液や下痢後の水分補給のためのORS(経口補水液)などの商品を販売しています。僕はセールス&マーケティングアドバイザーという立場で、原価計算を元にした適切な価格の設定、販売戦略の立案、売上など数字管理、サプライチェーンマネジメント、新製品の導入等を行っています。またセールススタッフに研修を行ったり、スタッフのマネージメントにも関わっています。

—少し話は逸れるのですが、NGOが避妊具やORSを格安で配布、販売することが一般企業の市場圧迫に繋がることにはなりませんか?

 

まだマラウイでは地場の保険医療メーカーは少なく、一般の人も避妊具やORSなどをあまり使用していません。商品の使用を促したり将来的に地場産業を起こすために今は立ち上がりの段階です。まず商品を利用してもらって認知度をあげ、徐々に市場を広げていくことが大事だと思います。市場を開拓することは民間の企業にとってもプラスに働きます。そして国の発展段階に併せてPSIは製品の値段を徐々に上げて行き、最終的には支援や助成金なしでの製品販売に移行する予定です。

 

 

—日本で働かれていた頃からマーケティングや営業を経験されていたのですか?

 

民間企業で働いていた頃は工場や研究所に制御機器を販売する法人営業をしていました。その後日本のNGOでファンドレイジング、カンボジアでの営業支援、インドでのロジスティクス業務などを行いました。その時の経験が今に役立っていますね。自社の商品やサービスのターゲットであるモデルユーザー(ペルソナ)を作り出し、そのユーザー像を活用した戦略を練るペルソナマーケティングという手法などは今の仕事でも使っています。

 

 

—国際NGOで活動するというのは協力隊でも珍しいと思うのですが、メリットとデメリットはどう考えますか?

 

組織や仕事のシステムがしっかりしているので、学ばせてもらうことが多いです。またマラウイ人の他にも、スコットランド人やアメリカ人、ジンバブエ人やエチオピア人など国際色豊かな同僚と働くのも良い経験でした。

一方、村での地域に密着した活動の経験や、自分で何か新しいことを始める、0から1を生み出すという経験はあまり得られませんでしたね。

 

 

 

—谷口さんはブログ「かつろうのカツカツ日記(http://katsurotaniguchi.com/)」を運営されていますが、どういう理由で始められましたか?

 

カンボジアにいた時に将来の自分の為に備忘録として始めました。あとはアフリカをはじめとする途上国やビジネスについて情報を得たいと思っている人の役に立てればいいなと思って発信しています。じっくりと調べてから記事を書くことが多いので時間はかかりますが、初めて会った人にブログ見ていましたと言ってもらえると嬉しいですね。

 

 

—あと1ヶ月で2年間の任期を終えられる訳ですが、今後の進路や目標などは決めていますか?

 

2016年の1月から1年かけて南アフリカのケープタウン大学でMBA*を取得します。ビジネスやその手法によってアフリカの問題を解決する、というのが将来の最終目標なのでそのためにアイデアは常に平行して色々考えています。例えばマラウイの雇用問題を少しでも解決するためにマラウイジョブハント(http://malawi-jobhunt.com/)という就職情報サイトを作りました。ケープタウン大学は世界中から人が集まってくる大学なので、ビジネスパートナーを見つけられたら嬉しいですね。

*MBA(Master of Business Administration.

経営学修士)

 

 

—南アフリカの大学院でMBAを取るというのは以前から考えられていたのですか?

 

大学時代からいつかは日本を離れて途上国で何かをしたいと漠然と考えていました。マラウイに住むようになってから目標が徐々に明確化し、このアフリカでビジネスを学んで将来は起業したいと思うようになりました。TOEFLはマラウイ国内で受けることができたのですが、GMAT*を受けるために隣のザンビアまで行ったり、Essayを何回も書き直して提出したりと受験プロセスは結構大変でした。つい二週間前に運良く合格通知が届いたのでこれで安心して日本に帰国できます笑

*GMAT Graduate Management Admission Test)

ビジネススクール(経営大学院)への入学希望者を対象に行われる入学適性テスト

 

 

—最後にマラウイで過ごしたこの2年間はどうでしたか?

 

多くの挫折や失敗もありましたが、実際にアフリカに住んだことによりアフリカを肌感覚として理解することが出来ました。その中でこれから何をしたいか、何をすべきか、どうすれば納得の出来る人生を送れるかなどおぼろげながら自分の天命を知ることができたと思います。

 

 

取材日:2015年9月

文責:26年度3次隊 矢倉厚子

 

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